鮎川詢裕子メッセージ

「聴く力」「聴き方」と信頼の関連性

職場や家庭などで話をするとき、話を聞いている聞き手のかかわりによって、やる気が湧いたり、モチベーションが上がったり、しらけてきたりすることはありませんか?

「聞く」には様々な種類が存在します。

その聞き方によって、信頼を損なったり、怒りを買ったりすることがあります。

「聞くこと」が信頼を得たり、失望されることとどう関係しているのか、整理してみたいと思います。

 

「話すのが得意」それとも「聞くのが得意」?

企業でワークショップ(実践的な体験型の研修)をするとき、場づくりのために身体を動かすワークを行うことがあります。

たまに「聞くのが得意な人」と「話すのが得意な人」に分かれてもらうのですが、だいたいいつも同じ結果になります。

あなたは、自分のことを「聞くのが得意」と思っている人と「話すのが得意」という人のどちらが多いと思いますか?

 

正解は、

 ・

 ・

 ・

「聞くのが得意」な人です。

実は「聞くのが得意」だと思っている人が「話すのが得意」だと思っている人よりもずっと多いのです。

 

予想は当たっていましたか?

なぜ「聞くのが得意」の方が多いのでしょうか?

 

考えてみると、「話す」は能動的な行動で、「聞く」は受動的に捉えやすいのかもしれません。

また、「話す」のは人からどう話しているのかわかりますが、「聞く」は実際にどう聞いているのか直接わかりません

このため、「聞く方が得意」と答えやすいのではないかと推察しています。

 

この回答自体に、正解・不正解はありません。

あくまでも、その人が思うものを答えてもらっているからです。

 

それでは果たして、実際にはどうなのでしょうか?

 

聞いていると思っていたことが「えっ、そういう意味だったの!?」に変わる瞬間

通常かかわらせていただくとき、連携力、リーダーシップ、理念経営など、いろんなテーマがありますが、比較的早い段階でコミュニケーションを扱います。

 

コミュニケーションという、一見漠然としていてあいまいなものを

簡単な実験をしてどんなメカニズムになっているのか、体験します。

 

コミュニケーションの構造を体感し、理解することによって、

これまで自分がやってきたこと、信じていた認識がガラガラと崩れる人も珍しくありません。

同じ言葉を使っていたとしても、湧いてくるイメージや、気持ちや印象など、人によってさまざまです。

頭では知っているはずなのに、どこかで違うところがあるのを忘れがちなのが私たち。

 

「ひとり一人の違いを意識して話を聞けるかどうか」

そして「その違いを尊重できるか」で、

相手が伝えたい意味に行きつけるかどうかが変わってきます。

 

「聞く」にはいろいろな種類があります

英語でいえば、listen(意識的に耳を傾ける)、hear(自然と聞こえる)、ask(質問する・尋ねる)といったように、日本語の「聞く」も「聞く」、「聴く」、「訊く」など、沢山の種類の「きく」があるのです。

 

ここからは意識的に耳を傾ける「聴く」という表現を使って「聴き方」「聴く力」によって、信頼から失望といった様々な影響をどうもたらしていくのかを考えてみたいと思います。

 

 

「聴く力」の段階 ~相手の信頼度・その影響~

「聴く力」のことを「傾聴」ともいいます。
この「聴く力」のレベルをここでは大きく3つに分けてみていきます。

 

(1)マイナスレベル

 聴き方

 ①自分の都合で関心があることだけを聞き、相手の言葉を自分の解釈で聞いている。
  相手に関心を払っていない。
  自分が正しいと思っている考えと異なると、「そうじゃない」と相手を否定する。
 ②相手の話(解釈)に翻弄されてしまう。遠慮、あるいはどう接していいのかわからない。

 相手の状態

 ①聞いてもらっている気がしない。誘導されている。何を話しても聞いてもらえた感がない。
  同意されたとしても、孤独。怒りやあきらめ、理解されない失望感。
 ②話は聞いてもらっているが、何も解決しない。新たな発見もない。

   
 聞き手のかかわりへの信頼傾向:

 残念な気持ち、もう話したくない。時間の無駄。信頼どころか失望。
 やる気が失せる。頼りにならない。
 
 予測される可能性:

 聞き手:①一歩間違えると裸の王様に ②あてにされない
 話し手:心が離れていく
 全体:会話が少ないか一方的な会話

 

(2)一般レベル

 聴き方

 ・出来事・事実・情報といった客観的な事象(5W2H)を聞いている。
 ・質問して相手の考えを聞き、相手がわからないことはアドバイス・指導して解決を図る
 ・行動要因について質問するが、自分が経験してきた自分にとっての正解を伝えるきっかけにしている。
 ・タスク(やること)中心に話を進める

  
 相手の状態:

   自分の足りないところがわかる。事実に関する整理と認識合わせができる。
   相手を信頼・尊敬できていると納得感がある。
   信頼・尊敬がないと反発心・やらされ感を感じることも。
   できなければ多少何か言われるが解決してもらえる。

 聞き手のかかわりへの信頼傾向:

   ある面では信頼できるが、本当の自己成長につながっていない。どこか表面的。
   事柄は進むが言うことに従うことで認められる
   アドバイスはいつも納得できているわけではないが、やらないと面倒なので聞くようにしている。

 予測される可能性:

   いつまでも相手(部下など)が育たない。依存体質に。本音が語られない。
   言ったことはやるが大きな成長がみられない。
   話し手:本当にやりたいことよりも目の前の仕事をこなしがちに。

(3)成長を引き出すレベル

 聴き方:

 ・出来事・事実・情報といった客観的な事象、考えに加え、本音、行動要因を掘り下げて聞いている。
 ・相手の成長領域を意識してかかわっている。
 ・相手が置かれている状況や背景をイメージしながら聴いている。
 ・相手の成長への突破口をその場の会話から見つけていく
 ・相手がなんでも話しやすい雰囲気・環境、関係をつくる
 ・アドバイスはせず、一緒にアイデアを考える
 ・相手が知らない必要な情報があれば渡す
 ・相手の理解を深めたり、新たな視点、視座を渡しながら聴いている
 ・相手の表面に現れている部分だけでなく、その人そのものの可能性を信じてかかわっている

 相手の状態:

  ・今の状況を客観的に捉えることが出来たり、より望ましい視点・視座から考え、意義を見つけることが出来る
  ・聞き手の投げかけに答えているうちに、自分で話しながら自分の考えや本音に勝手に気づく(オートクラインの状態が起きる)
  ・これまで思ってもみなかった発想やインスピレーションが湧き、納得感や喜びと臨場感とともに自ら実践したくなっている
  ・自分の思考・行動を引き起こしている思考パターンや固定観念に気づき、それを手放しより最適な考え方・新たな観念を選択することができる

 聞き手のかかわりへの信頼傾向:

  ・この人が引き出してくれたおかげで自分は成長できた

ここでは聴き方を中心に記載していますが、伝える必要があることはしっかり伝えるが重要です。
拙著「最高のリーダーほど教えない」p114の「部下に伝えておくべき前提情報」に記載しておりますので、参考にしていただけたら幸いです。
「部下」を「相手」に読み替えていただくと、いろいろ応用できます。

この3つのレベルも詳しく見ていくと細分化することができます。
特に成長を引き出すレベルは、幅広く大きな違いを生み出します。

 

多くの人は「自分は話が聴けている」と思っている

リーダーの部下との対話力向上にかかわってきて、実感しているのは
「ここがもったいないですよ」と指摘するまで「自分は話が聴けている」と思っている人がほとんどだということです。

それは、冒頭に書いたように「聞く」という行為そのものが、受動的に見えたり
質問を掘り下げる経験がないからでしょう。
特に企業では、タスク中心でレベルマイナス、一般レベルの会話が多く、
話しをしている人の人間性にスポットライトを当てる習慣が少ないし、聴き手自体もそのように聞いてもらった経験が少ないためではないでしょうか。

これは、実際に

「まだ自分の意見を言うのは早いですよ」

「相手の声のトーンの変化に気づいていますか?」

「ここはさらに質問するポイントですよ」

などと声をかけてもらわないと気づきにくいものです。

その感覚がつかめると、会話の質がものすごく変わります

きっと会話でできる可能性を実感されるのではないかと思います。

本気で変わりたい人のためになんとか、そのしくみをつくろうと準備をしています。

 

また、今回取り上げたテーマと関連して、私たちの現実には3つの層が存在しているという見方(モデル)があります。
自己理解や他者と深い意識レベルにおける合意形成をもたらしていくには、この3つの層を配慮することによって
仕事やプロジェクトの推進などにおいて、深い意義・共通の価値観をもって実践していくことができます。


この考え方を知っておくと、今日ご紹介した「聴く力」にも大いに役立ちますので改めて取り上げていけたらと思います。


「聴く」という外側からは見えにくい行為が、その「聴き方」「聴く力」によって相手の成長のみならず、聴き手本人への信頼や起きる出来事にまで、どう影響するのか
ご理解いただけたのではないかと思います。

あなたはどのレベルにいることが多いでしょうか?

 

まずは自分の現状を知ることが大事です。

現状を知ると、具体的に何が必要なのか、何ができるのかがわかります。

 

具体的なやり方は、拙著「最高のリーダーほど教えない」でも取り上げてています。

読みかえしながら実践したら変化が起きたという、報告を多数いただいています。

他にも書店に行けばやり方が書かれた本が見つかると思います。

「やり方がわかる」のと「できる」のは大きな違いがあります。
ぜひ、実際に身近な話しやすい人を相手に試してみてくださいね。

 

そのやり方を確実に早く身につけたい場合は、現在公開セミナーを開催しておりますのでご活用ください。
企業向けもお受けしておりますので、ご相談くださいませ。

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